トハがまだ成りたての初心者3DCGデザイナーだったころ、3DCG未経験から転職したため、スキルや経験がないことに負い目がありました。
そんな中、スキルや経験がないならせめてこれだけはやろう!
と決めてやっていたことで、「やっててよかったなあ」と思うことがあります。
そのひとつが、「3DCGのデータをきれいに作ること」です。
この記事では、3DCGのデータをきれいに作ることで得られるメリットと、データをきれいに作ることが大事な理由について書いていきます。
3DCG初心者でもきれいなデータは作れる
3DCG初心者にとって、仕事として通用する3DCGを作るのは難しいことです。
難しいっていうか、最初は作れません。
新卒採用や未経験からの転職で、3DCGデザイナーとして働き始めたばかりのころは特にです。
会社に就職できても最低3か月は研修だし、研修が終わっても1年くらいは練習みたいな感じです。仕事として満足のいくクオリティの3DCGを作れるまでには、どうしても時間がかかります。
それは普通のことで、会社の先輩デザイナーさんたちはちゃんと分かっています。
だけど、まだ仕事レベルの3DCGを作れないうちからできることがあります。
それが「3DCGのデータをきれいに作ること」です。
きれいなデータっていうのはどんなのかというと、こんな感じのデータです。
- 不要なゴミデータがちゃんと削除されてる
- オブジェクトの名前が正しく付けられてる
- オブジェクトに不要な移動・回転・スケールの値が入ってない
- オブジェクトの位置や向き、原点の場所が正しくなっている
- 重なってる頂点やポリゴン、裏向いてるポリゴンなどがない
- ボーンの軸の向きや名前が仕様に合っている
- 仕様書で指定された通りのデータ構造になっている
こういうことは、3DCGの出来栄えとは関係ありません。
上手な3DCGはすぐ作れなくても、データをきれいに作ることは、気を付ければ誰でもできます。
オブジェクトの名前や向きが正しいかどうかは、目で見ればチェックできます。仕様書がきちんとある仕事なら、仕様書をよく読めばその通りのきれいなデータが作れます。
頂点やポリゴンの重なりを目で見てチェックするのは難しいですが、だいたいの3DCGソフトには、そういう頂点やポリゴンをチェックできる機能がついています。
チェック機能をうまく使えば、3DCG初心者でも自分でチェックすることができます。
3DCG未経験の社会人が3DCGデザイナーになるまでにやったことで書いていますが、トハは3DCG未経験の状態から専門学校へ行き、1年で3DCGデザイナーに転職しました。
シロウトに毛が生えた程度の腕前で、プロの3DCGデザイナーになってしまったんです。
自分の力量が未熟なことは分かっていたので、上手な3DCGは作れなくてもせめてデータだけはきれいに作ろう、という心持ちで毎日仕事をやってました。
地味だけど意外に評価されるきれいなデータ
そうやって3DCGデータをきれいに作っていると、なぜか褒められることを知ります。
褒められることに気をよくしたトハは、その後もずっと”きれいなデータ”を心がけ続けました。
そんなこんなで10年の月日が流れ、仕事で認められるクオリティの3Dモデルが作れるようになったいまも、トハは常にきれいなデータを作ることを心がけています。
3DCGのデータがきれいなことは仕事で評価される、ということが分かったからです。
なぜ評価されるかというと、世の中にはデータがきれいじゃない3DCGがわりと多いからです。
3DCGのデータがきれいかどうかは、実際にデータを見た人にしか分かりません。
データを見る人というのは、社内の他のデザイナーさんや、データを扱うプログラマーさん、作った3DCGを納品する取引先の会社さん、などです。
つまり、一緒に仕事をする人たちです。
データがきれいかどうかは外から見ても分からないし、人に自慢することでもないので地味です。
でも、一緒に仕事をした人たちには分かります。
自分と仕事をした人たちが自分を評価してくれるということは、仕事において何よりの実績です。
世の中にはきれいじゃない3DCGデータが、わりと多いといいました。
これはトハの勝手な推測ですが、3DCGデザイナーの中には、データのきれいさを特に重要視しない人もいると思います。
性格的に細かいことが不得意だったり、名前の綴りを正しく書くことがニガテな人もいると思います。別にニガテでなくても、うっかりまちがいをすることは誰にでもあります。
いろいろな理由により、データがきれいじゃない3DCGというのはわりとあります。
でもそういう3DCGは、仕事ではほとんどの場合あとで修正するハメになります。
3DCGの仕事上、きれいじゃないデータは問題があるからです。
3DCGの仕事で実は大事だったきれいなデータ
きれいじゃないデータはなぜ問題があるのか?
主な理由はこれらです。
- 他の人がデータを見たとき分かりにくい
- 他の人がデータを使うとき問題が出て使えない
- ゲームなどのプログラムでバグの元になる
- そもそもエラーになってゲームに出力できない
- 影響が広範囲なまちがいをあとから修正するのは大変
- データを納品する客先への印象があまりよくない
会社で働く3DCGデザイナーの仕事は、自分ひとりで完結することはほぼありません。
自分がした仕事を受け取とり、そのあとに仕事をする人たちがいます。
ゲーム開発の仕事を例にすると、こんな感じに仕事が流れていきます。
- モデラーが3Dモデルを作って
- リガーがその3Dモデルにリグを作って
- そのリグを使ってモーションデザイナーがモーションを作って
- そのモーションにエフェクトデザイナーがエフェクトを付けて
- 完成したデータをプログラマーがゲームで遊べるように出力する
こういう仕事の流れの中で、きれいじゃないデータというのは、自分よりあとの工程で仕事をする人に迷惑をかけてしまいます。
オブジェクトやボーンの名前がまちがってたり、おかしなポリゴンがあったり、消さないといけないゴミデータが残ってたりすると、どこかで必ず問題が起きます。
途中で誰かが気付けばまちがいを指摘してくれますが、まちがいの回数が多くなると指摘するほうもされるほうもイヤだし、お互いめんどうです。
そして、稀に途中の工程で問題が起きず、きれいじゃないデータの3DCGがゲームで使われてしまうことがあります。こういうとき、3DCGのデータが予期せぬバグの原因になったりします。
3DCGデザイナーの仕事は、一緒に仕事をする人たちとの協力の上で成り立っています。
自分が作るデータは、自分だけが使うものではありません。
だからデータをきれいに作ることは、3DCGの仕事をするうえで大事なことなのです。
自分にとってもメリットがあるきれいなデータ
一緒に仕事をする周りの人にとって、3DCGのデータがきれいなことはいいことです。
そして、データをきれいに作ることは、周りだけでなく自分自身にとってもメリットがあります。
- きれいなデータは周りの人から評価される
- きれいなデータは自分が信頼されることにつながる
- まちがいデータを修正する手間が省ける
繰り返しになりますが、データがきれいなことはそれだけで評価されます。
上手な3DCGを作るよりはるかに簡単なことですが、めんどくさかったり忙しくて時間がなかったりで、おろそかにされやすい部分でもあるからです。
なので仕事で毎回きれいなデータを作っていると、だんだん周りから信頼されるようになります。
「この人はいつもきれいなデータを作ってくれるから安心だ」と思ってもらえることが増えます。
ま、そうはいっても人間ですからまちがうこともあるけどね^^
いくら気を付けていても、まちがってしまうことは誰でもあります。そういうときは素直に謝ってデータを修正して、また同じまちがいをしないように気を付けるしかありません。
だけど、気を付けていればまちがいの回数は確実に減らせます。まちがいを減らすように気を付けている人は、周りから見れば”まちがいが少ない人”です。
データのまちがいが少ないと、データ修正にかかる手間も少なくてすみます。
ちなみにここで言ってる ”きれいなデータ” は、”最終的に完成した3DCGデータ” のことです。作成途中のデータについては、自分が把握できていれば問題ありません。
ですが、作成途中でも最低限はデータをきれいにしておくことをおすすめします。
最低限きれいなデータとは、「1週間後に自分が見ても理解できるくらいのデータ」です。
例えば、オブジェクトの名前がぜんぶcube01、cube02、cube03…みたいになってると、1週間後にデータを開いたら、自分でもどれがなんのオブジェクトの名前だったか分からなくなります。
せめてシーン内のオブジェクトには、自分が分かるような名前を付けておいた方がいいです。
毎回オブジェクトに名前を付けるのはめんどくさそうですが、名前を付けてないとあとでもっとめんどくさいことになります。オブジェクトには名前を付ける、を習慣にしてみてください~
きれいな3DCGデータを作るコツは意識する&慌てない
さて、きれいなデータは気を付ければ作れる、といってますが具体的にはどう気を付けるのか?
1番原始的な方法は、チェックリストを作ることです。
完成したデータを提出する前に、データがきれいかどうかチェックリストを見て確認する訳です。チェックリストには、この記事のまとめ部分にまとめているようなことを書きます。
チェックリストを作らないまでも、完成したデータを ”最後にもう一度自分でよく確認する” ことで、単純なデータのまちがいは減らすことができます。
なによりもまずは、きれいなデータを作ろうと意識することが大切です。
どうしても細かい確認作業がニガテな場合は、スクリプトを使って自動的にチェックする方法もあります。(スクリプトについては詳しくないので詳細は割愛します><)
それからけっこう重要なのが、慌ててデータを作らないということです。
トハの経験上、慌てて作ったデータは80%の確率でなにかまちがっています。
データ提出期限のギリギリなってしまったとき、早く仕事を終わらせて帰りたいとき、こういう状況で作ったデータはだいたいどこかまちがっていて、あとで修正することになります。
慌てているとミスをしやすくなるものです。
ゲームに実装するためのデータや、客先に提出するデータを作るときは、まず落ち着いて、慌てず慎重に作業することをおすすめします。
まとめ:3DCGのデータをきれいに作ることはやって損なし
この記事では、トハが初心者3DCGデザイナーだった頃からやっててよかったと思う、「きれいな3DCGデータを作ること」について書きました。
きれいなデータとはこんな感じのデータです。
- 不要なゴミデータがちゃんと削除されてる
- オブジェクトの名前が正しく付けられてる
- オブジェクトに不要な移動・回転・スケールの値が入ってない
- オブジェクトの位置や向き、原点の場所が正しくなっている
- 重なってる頂点やポリゴン、裏向いてるポリゴンなどがない
- ボーンの軸の向きや名前が仕様に合っている
- 仕様書で指定された通りのデータ構造になっている
Mayaのデータであれば、ヒストリーをちゃんと消しておく、なども含まれます。
きれいな3DCGデータを作ることは、「3DCGデザイナーの仕事としてちゃんと評価してもらえる」というのが、トハの経験からくる結論です。
データがきれいで困る人は誰もいません。むしろみんな嬉しいし、自分にもメリットがあります。
もし3DCGを仕事にしていきたいと思っていて、これまでデータのきれいさとか考えてなかったな…という場合は、これからちょっとだけきれいな3DCGのデータを作ることを意識してみてください~
きっといいことがあります!
実はもうひとつ、3DCGデザイナーになって続けてやってみてよかったなぁと思うことがあります。
それは、”3DCG制作の作業内容を毎日記録すること”です。
これについては、仕事でやった3DCG作業を毎日メモしてみた結果~作業記録はお役立ち情報の宝庫!で書いていますので、よければ読んでみてください~
コメント一覧
きれいにつくるって大事ですよね。
毎日メモ最近さぼってましたが、改めて記録をつけることにしました。
しまりすさん、コメントありがとうございます~
データきれいに作っておくとあとでけっこう自分も助かりますしね。
毎日メモもつけておけばなにかと役に立つはず~と思います^^