6年勤務したゲーム会社から3DCG制作会社に転職したとき、トハはあることをきっかけに3DCG作業の内容を毎日メモするようになりました。
作業内容の毎日メモを5年以上続けてみた結果、
「3DCGの作業記録ってけっこう役立つ情報になるなぁ~」ということがわかりました。
この記事では、自分の3DCG作業を記録しておくと一体どんなことに役立つのか、具体的な例を交えて紹介してみたいと思います。
仕事や転職といった実用的なことに役立つと思って書いているので、興味あるかも?という方はぜひ読んでみてください~
3DCG作業の内容を毎日メモして記録すると…
3DCGの作業内容を毎日メモしようと思ったきっかけは、転職先の3DCG制作会社で書くことになった「月報」です。
その月に何の案件でどんな仕事をしたか、複数案件の作業をした場合その割合%はどれくらいか。それを月1回、各デザイナーが自分で書いて提出するのが月報でした。
転職前、ゲーム開発会社に在籍していたとき月報はありませんでした。
転職先で初めて月報を書くことになりましたが、いざ書こうとすると、1か月どんな仕事をしていたのかなかなか思い出せません。複数案件の作業割合なんてぜんぜんわかりませんでした。
人間ってすぐ忘れる生き物なので、1週間前のことでもはっきり思い出すのは難しいです。
1か月の仕事内容を思い出すのが大変で、月報を書くのに苦労してしまいました。
で、めんどくさがりのトハは月報をかんたんに書くにはどうすればいいか考えた結果、「毎日やったことをメモしとく」という結論にいたった訳です。
忘れないうちに作業内容をメモしておけば、月末にがんばって思い出さなくても済みます。1か月分の作業メモを見て、実際やってたことをまとめて書けばいいだけです。
そんな理由で始めた3DCG作業の記録ですが、やってみるとこれが月報を書く意外にも、いろいろ役に立つことを発見しました。
3DCG作業の記録は仕事のスケジュール作成に役立つ
3DCGの作業を記録しておくと、まず仕事のスケジュールを作成するときに役立ちます。
これもゲーム会社にいたときはあまりなかったことですが、3DCG制作の下請け業務では、制作スケジュールが「日単位」でしっかり決められていることが多いです。
スケジュールの日数は、案件の種類や内容によってまちまちです。スマホ案件かPS4案件か、キャラクター制作の場合はモデリングとテクスチャだけか、ウェイトなどのセットアップもやるのか…
場合によっていろいろですが、「スケジュールを何日にするか?」というのは客先側と請負側で協議して決めます。
例えば客先から「10日でキャラクターモデル1体、セットアップ込みで」と依頼されたとしても、その期間で求められるクオリティのモデルを制作するのが無理っぽい場合もあります。
そういうときは「モデリングで5日、テクスチャで5日、セットアップで3日かかるので13日ください」のように、”根拠立てて”説明しスケジュールを確保する必要があります。
ここで必要となるのが”根拠”です。
根拠(こんきょ)
判断・推論などを成り立たせるよりどころ。行動などの正当性を支える事実。
客先側は請負側に、お金を支払って3Dモデル制作を依頼しています。単純に制作スケジュールが長くなるほど、支払うお金も高くなることが多いです。無駄に長いスケジュールになると困ります。
ただし、単に短いスケジュールにして安くしてほしいって訳でもありません。
いくら安くてもよくない3Dモデルしか出来上がってこないなら、わざわざお金を支払って3Dモデル制作を依頼している意味がないです。(これも案件によるので一概には言えませんが)
ということで、きちんとした根拠に基づいて必要なスケジュールを確保することは、客先側・請負側の双方にとって大切なことです。
きちんとした根拠。
これがないとまっとうなスケジュールを作成するのは難しいです。
ここで役に立つのが「3DCG作業の記録」です。
これまでの3DCG作業を記録していれば、作業記録を根拠にしてスケジュールを作成できます。
・自分がどの作業にどれくらいの時間が必要かわかる
例えば、1体のキャラクターをモデリングからセットアップまでやる仕事があったとして、その仕事をしている間、3DCG作業の内容を毎日メモしたとします。
仕事が完了したあとメモを振り返ってみれば、だいたいこんなことが分かると思います。
- 1体のキャラクターモデルが完成するまでに何日かかったか
- モデリング、UV、テクスチャ、セットアップ、それぞれに何日かかったか
- 思ったより早くできた作業、逆に時間がかかった作業はどれか
- あとからの修正が多かった作業、少なかった作業はどれか
自分の3DCG作業を記録した内容には、事実しかありません。
あとから記録を確認してみると、実際に自分がどの作業にどれくらいの時間を使ったのかわかります。
ポイントは「実際に自分が使った時間」というところです。
3DCGに限らずなんでも言えることですが、作業するスピードは人によってちがいます。
また、人によって得意な作業/不得意な作業もちがいます。
モデリングは時間がかかるけどテクスチャはさっと描ける、モデリングもテクスチャも早いけどセットアップは時間がかかる、のように人それぞれです。
ほかの人と比べて作業スピードが遅いとか、そういうことはいま気にしなくても大丈夫です。
まず大事なのは、「自分はどの作業にどれくらいの時間が必要なのか」を知ることです。
これがわからないと、自分の作業スケジュールを考えることができません。
提示されたスケジュール日数で自分の作業ができるかどうか、それを判断するには、自分が作業するのに必要な時間がわかっていないと難しいです。
そして、自分がどの作業にどれくらい時間が必要なのかは、実際に作業してかかった時間を見てみるのが1番わかりやすいです。
キャラクターのモデルを1体完成させるには、それなりに時間がかかります。モデルを作っているときは作業に一生懸命になっているので、どんどん毎日が過ぎていきます。
モデルが完成したとき完成までの日数を数えてみると、すごく日が経ってて軽くおどろいたりしますが、日数分の作業内容を思い出そうとしても細かく思い出せないことはよくあります。
人間は1週間前のこともはっきり思い出せないくらいですから、1週間以上かかる3DCG作業の内容を、思い出すのが難しいのは当然です。
だけど、その日やった作業の内容を、その日のうちにメモすることはできると思います。
あとから思い出すのは大変なので、毎日ちょこっとメモすることを習慣にしてしまうとラクです。
・過去の制作事例と比較していまのスケジュールが出せる
ということで、とりあえず仕事でやった3DCG作業を毎日記録してみたとします。
するとだんだん作業記録がたまっていきます。
例えばトハの場合なら、下請けとしてキャラクターモデルを作る仕事をしていたときは、いろんなキャラモデル制作の作業記録がたまっていきました。
もし新しいキャラクターモデルを作るとき、「あ、このキャラモデルは前に作ったあのキャラモデルと似てる」と思うことがあったら、
前に同様のキャラモデルを作ったときは何日かかったのかを、記録から調べることができます。
あるいは、「このキャラモデルは前に10日かかったキャラより髪も服も複雑だ、ということは10日では作れないな」ということがわかったりします。
つまり、過去作ったものと比較することでいま作るもののスケジュールが出せるようになります。
はっきり言ってトハは、スケジュールを出すのがものすごくニガテです。
もといたゲーム開発会社では、ざっくりスケジュールで仕事していたからかもしれません。
3DCG制作会社に入って日単位で決まっているスケジュールを見たとき、こんな正確なスケジュール自分にはぜったい作れん!と思いました。
自分がキャラクターモデル1体作るのに何日かかるか、数えたことがなくてわからなかったので、最初はとにかく提示されたスケジュールでやりきることだけ考えてました。
でも、毎日の3DCG作業をメモしてキャラモデル制作の記録がたまっていくと、過去の記録を参考にして、いまのスケジュールが妥当かどうかをある程度判断できるようになりました。
もしいまのスケジュールでは足りなさそうだと判断したときは、早めにマネージャーなどの上長に相談してみます。足りないと判断した理由をちゃんと説明できれば、理解ある上長ならスケジュールを調整してくれます。
ここで判断の基準となるのが「3DCG作業の記録」です。
もし作業記録がなかったら、自分の記憶と、経験を頼りに判断するしかありません。
記憶力や経験の豊富さに自信があるなら問題ないかもしれませんが、そこまでの自信がなかったとしても、作業記録があれば過去の実績から客観的に判断することができます。
先に言ったとおりスケジュールはお金が絡んでくる部分でもあり、てきとうな理由で気軽に伸ばしたりはできません。スケジュールの調整にはそれなりの根拠が必要になってきます。
もちろん、たくさん3DCGを作っていれば、慣れてきたり実力がついたりして作業スピードもあがってくるかもしれません。
そのときは、過去の作業記録+現在の能力でスケジュールを考えてみればいいと思います。
--- 補足 ---
下請けの3DCG制作会社において、客先とスケジュールを決めるのはマネージャーやリーダーといった上長の方たちです。現場の3DCGデザイナーが、客先と直接スケジュール交渉するわけではありません。
ただ、実際に作業をするのは現場の3DCGデザイナーなので、上長さんは作業する各デザイナーたちに、各自のスケジュールが問題ないか確認してもらうわけです。
各デザイナーは担当分のスケジュールが妥当かどうかを検討し、問題があるようならば上長に申告する、という流れです。ほかの3DCG制作会社でも似たような流れかな、と想像します。
(※状況によってはスケジュールがガチガチに決まってて調整の余地がないこともあります)
3DCG作業の記録は職務経歴書の作成に役立つ
さて、仕事のスケジュール作成に作業記録が役立つというはなしをしてきましたが、もうひとつ役立つことがあります。
仕事の3DCG作業を記録しておくと、職務経歴書を作成するときに役立ちます。
職務経歴書は転職するときに必要な書類で、転職しない場合は縁がないものです。
転職する気も予定もまったくない、という場合は気にしなくてOKです。
でもまあ、人生なにがあるかはわかりません。いま転職する気がなくても、もしかしたら数年後したくなるときが来るかもしれません。
そんないつかのときのために、いまちょっとこの先に目を通しておくのもいいと思います~
・職務経歴書に書くべきことは作業記録に書いてある
3DCGデザイナーが他の会社へ転職する場合、職務経歴書にはだいたいこんなことを書きます。
- 仕事で携わった案件やプロジェクトの概要、規模、期間
- 携わった案件やプロジェクト内で担当した仕事の内容
- 実際の制作実績(キャラクターモデル何体、モーション何種類など)
- 仕事で使用したソフト、使用可能ツール
職務経歴書で伝えたいことは、「これまで務めていた会社ではこんな仕事をしていました、こういう業務経験があります」というようなことです。
なので、前職で携わった案件の概要や、担当の仕事内容をわかりやすくまとめて書いていきます。(※まだ開発中だったり、契約上口外できない案件の場合は配慮して書く必要もあります)
しかしです。
直近1か月の仕事内容をまとめる月報ですら、いざ書こうとするとやってたことを思い出せずに苦労したと言いました。
職務経歴書に書く仕事の内容は、1か月どころじゃなく数年前までさかのぼって書くことになります。到底かんたんに思い出せるはずがありません。
特によくわからなくなるのが「期間」と「制作実績」です。
例えばゲーム開発の仕事であれば、さすがにどんなゲームの開発をやってたか思い出せないことは少ないと思いますが、その仕事に携わっていた「期間」というのはけっこうわからなくなります。
さらにその「期間」が数年単位の長さになると、期間中に仕事として作ったものの「制作実績」もちゃんと思い出すのが難しくなります。
トハが転職時に職務経歴書を作ったときは、これらを思い出すのにほんとうに苦労しました。
3DCG作業を記録し始めたのは転職したあとからなので、このときは作業記録がなかったんです。結局よく思い出せないままで、辻褄が合うようにてきとうに書いてしまった部分もあります。
就職に必要な書類ということもあり、不確かなことを書くとなんとなく後ろめたさを感じてしまいます…なるべく正しい情報を書きたいところです。
ということで、
もし最初から3DCG作業の記録を残していれば、職務経歴書もかんたんに作れたのになぁ~と、あとから思ったというはなしですね。
職務経歴書のためだけなら、作業内容を毎日メモする必要はありません。携わっていた案件が始まったとき/終わったときに、期間や規模や制作実績をメモしておくだけでも十分だと思います。
ただまあ、たまにしかやらないことは、やること自体を忘れてしまったりします。
毎日やる、あるいは週末とか月初めにやる、のように習慣にしてしまったほうが、忘れずに続けられるかなと個人的には思います。
そうやって自分の3DCG作業を記録し続けていると、もうひとつおまけのいいこともあります。
3DCG作業の記録は3DCGデザイナーとしての日々の証になる
おまけのいいこと、それは自分が実際にやってきたことを自分自身で確認できることです。
3DCGデザイナーとして仕事を続けていると「なんか気付いたら1年経ってた」みたいなことがあります。毎日なんやかんや忙しくしていると、あっ!という間に月日が流れていくんですね~
それは別にわるいことではないんですが、もう1年経ったんか~と思うと同時に
「この1年自分なにやってきたっけ?」ってなることがあります。
や、仕事さぼってたとかじゃないですよ。
忙しかったんだから目の前にある仕事を必死にやってたはずです。
でも具体的になにをやって、どんなことを得たとかって、意外に思い出せなかったりするんです。
この記事ではもう何回も言ってますが、人間ってすぐ忘れちゃいますからね。
もちろん、開発に携わったゲームが発売されるとか、作ったモデルがPVでお披露目されるとか、自分がやった仕事の実績がちゃんと目に見える形になることもあります。
だけど、開発したゲームが世に出ないままお蔵入りになることもあります。作ったモデルが最終的に使われなくなることもあります。
それに、昨今のゲーム開発では開発期間が数年におよぶことも多いです。そうなると、自分の仕事の実績は長いこと日の目を見ないし口外することもできない、みたいなことになります。
そういうとき、ふと「自分なにやってきたっけ?」ってなったりします。
でもですね。
なにもやってなかったってことは、ぜったいありません。
それを裏付けてくれるのが「3DCG作業の記録」です。
まあ、大きな視点から見ればたいしたことはやってないかもしれません。でも小さな視点で見れば、毎日なんかしらの問題を解決したり、知らなかったことを新しく知ったりしてるはずです。
過去の作業記録を振り返ってみると、そういう小さな実績に自分で気付くことができます。
「お、実はけっこういろいろやってきたな自分」って思えると、ちょっとだけ3DCGデザイナーとしての自信がついたりもします。
実際に手を動かしてやってきたことは、自分を裏切らないと思います。
その行動の積み重ねが、
3DCGデザイナーとしての成長や自信につながっていく、とトハは思います。
別の記事で、昨日より、今日ひとつでも成長できたらOKの精神で続けるというはなしをしていますが、毎日の作業記録はまさに、自分の日々の成長記録にもなってくれます。
まとめ:かんたんメモでもいいから作業記録を残すのおすすめ
この記事では、
毎日の3DCG作業を記録しておくとあとでいろいろ役に立つ~ということを書きました。
まとめると、3DCG作業の記録はこんな感じで役に立ちます。
- 3DCG制作の仕事でのスケジュール作成に役立つ
- 転職するときに職務経歴書を作成するのに役立つ
- 3DCGデザイナーとして仕事をしてきた日々の証になる
作業内容を毎日メモするなんてめんどくさ~と感じるかもしれません。
ま、たしかに若干めんどくさいですね。
そういうときは、めんどくさくない程度のかんたんメモにしておくといいかもしれません。実際トハが続けている毎日メモも、ぜんぜん細かいことは書いてません。
それくらいのかんたんメモでも、なにも残さないよりはずっと役に立っていると感じます。
もしこの記事を読んで、試しに毎日メモしてみようかな?と思った人は、なるべくかんたんで長く続けられそうな、やりやすい方法で試してみてください。
続けることで意味があるものになるので、やってみるならぜひ長く続けてみてほしいと思います~
おまけ:トハが実際にやっている毎日メモの方法
実は、トハが実際にやっているのは
その日の作業内容をメモすることではなく、次の日の作業予定を前日に書くことだったりします。
明日やる予定の作業内容をメモに書いて、明日がきて1日終われば、予定メモだったものがその日のおおまかな作業記録になる、という寸法です。
あくまで予定なので、書いたとおりに作業できないときもあります。そういうときは次の日にも同じ予定を書くので、予定通りにできなかったんだな~ということがメモの内容からわかります。
予定を書くメモには単語帳を使っています。
こんな感じのごく普通の単語帳です。
予定メモとして見るときは紙ぺらがいいので、外したり付けたりできる単語帳がちょうどいいです。この1ページに1日の日付と予定作業を書きます。小さい紙なので書くことはちょっとですね。
月報対策として2014年から書き始めたトハの毎日メモですが、2020年現在は6冊目の単語帳に突入しています。
会社をやめて個人事業主になった今も、毎日続けています^^
習慣とはおそろしいものだ~
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