
そのむかし、専門学校で3DCGを教えてくれた先生はこう言いました。
「参考資料は集めれば集めるほど、作るもののクオリティは上がる」
よく分からんけど、先生が言ってるからその通りやっとこう~
と、3Dモデルを作るときの資料集めには力を入れていたトハですが、その習慣を10年以上続けてきた今、断言できることがあります。
「参考資料をたくさん集めなければ、作るもののクオリティは上がらない」
この記事では、トハが思う”資料集め”の大切さについて書いていきます。
資料集めは大切!多すぎるくらい集めてOK

例えばキャラクターの3Dモデルを作るとき、そのキャラのデザイン画が手元にあると思います。
仕事の依頼で作る場合も、自分のオリジナルキャラを作る場合も、デザイン画なしで作り始めることは少ないです。もしかしたら、キャラクターの三面図のような資料もあるかもしれません。
これらの資料があれば、3Dモデルを作り始められそうな気がします。
でもちょっと待って~!
もし資料がこれだけだったら、実は少なすぎです。
デザイン画だけでもキャラクターのモデルを作り始めることはできますが、分からないことも結構あります。
例えばこういうことは、デザイン画や三面図からは読み取れないことが多いです。
親切なデザイン画なら、キャラクターの詳細や身に着けているものの質感について、補足で説明が入れてあることもあります。でも補足の説明だけでは不十分です。
作りたいものがどんなものかを把握するには、参考資料をたくさん見ることがぜったい必要です。
人間の記憶はあいまいなので、よく知っているはずのものでも、いざ思い出そうとするとぜんぜん思い出せません。思い出しても、実物とちがっていることはよくあります。
なので、
形や質感などの参考になる資料を集めて、それらをよく見ながらでないと3Dモデルは作れません。
資料を集めるときのポイントはこんな感じです。
- 多すぎると思うくらいの資料を集めてOK
- ちょっとでも参考になるかもと思った資料は保存しとく
- 集めた資料はちょくちょく見返す(新しい発見があったりする)
たくさんの参考資料を見ながら作られた3Dモデルには、説得力があります。
3Dモデルは言わばぜんぶがフェイクで、本物ではありません。だからこそ、説得力が必要です。
ばりばりファンタジーな架空生物の3Dモデルを作るような場合も、部分的には実在するものがモチーフになっていたりします。
そういう部分はやっぱり実在するものの資料を、たくさん見ながら作る方が説得力が増します。
※集めた資料を見るときは、画像ビューアという専用のソフトを使うと見やすくて便利です~↓
資料を集めるのは”3Dモデルを作り始める前”

参考資料を集めることは、3Dモデルを作りながらでもできます。
資料が欲しくなったら、そのときネットで調べればいいんじゃないの?と思うかもしれません。
いやいや、”3Dモデルを作り始める前”に資料を集めることで、得られるメリットがあります。
それは、作る前に完成モデルの全体像をイメージできることです。
作りたいものが頭の中にイメージできているかどうか、これは重要です。
なぜなら人は、頭の中に想像できないものは、作り出せないようになっているからです。
一応デザイン画という完成イメージの資料はありますが、これはあくまで絵なので、実際の3Dモデルの完成形とは違います。
どこをどんな造形で作るか?質感設定はどうするか?
そういうものを含めた、完成モデルの全体像をイメージできることが大事です。
3Dモデルを作るために必要な資料を集めていると、だんだん完成形のイメージが明確になってきます。そしてモデルを完成させるために、必要な「やること」も分かってきます。
資料を集めながらモデルの完成形を想像し、そこに到達するまでに必要な作業を考える。
このプロセスを、”3Dモデルを作り始める前”にやっておくことで、3Dモデル完成までの道のりが分かりやすくなります。
これは目指すものがブレるのを防ぎ、モデル作成に必要な作業量を考えるのにも役立ちます。
…まぁ、最初に考えたとおりには、うまくいかないこともよくあるんですけどね。
でも、目指すものが定まっているか、いないかの差は大きいです。
最初に必要な資料を探して集めることは、3Dモデルを完成まで導く手助けになります。
資料の種類はいろいろ!実物、イラスト、動画、フィギュア

参考資料を集める、とひと口に言いましたが、資料の種類はいろいろあります。
3DCGで作れるものというのは幅広いので、作るものそれぞれに合った資料が必要です。
- キャラクターモデル作成なら
…服、靴、肌、髪、装飾品や武器などの資料 - 背景モデル作成なら
…屋外なら地面や草木、屋内なら家具や調度品などの資料 - モーション作成なら
…動きの参考になる動画資料、自分で実際に動いてみるなど
また、キャラクターのモデルやモーションを作るときは、そのキャラの”キャラクター性”を表現することも重要なので、年齢や性格といったキャラクターの設定資料を集めることも大切です。
参考資料にはいろんなものがありますが、1番参考になる資料は実物そのものです。
もしスマホの3Dモデルを作るなら、スマホの写真を見て作るより、スマホの実物を手に取って見ながら作るほうが確実です。
でも手元に実物があることは少ないです。
そんなときは、実物をいろんな角度から映した写真や動画、実物のミニチュア・フィギュア・プラモデルなんかもいい資料になります。
じゃあ、実在しない架空のものはどうすればいいのか?
架空の存在のものでも、部分的に実在するものに近いところがあれば、その部分は実在の資料を参考にすることができます。
もし、完全に現実世界に存在しないようなものなら、まずは頭に作りたいもののイメージを思い浮かべてみます。
それから、イメージに近い表現のものが現実世界にないか、探してみるのはどうでしょうか。
オーロラとか超新星爆発のような特殊な現象とか、普段は目にしない不思議な生物などが参考になるかもしれません。あるいは、既存の映画やゲーム、書籍、イラストなんかも参考になります。
世の中にはいろんな表現がすでにいっぱいあるので、探してみると参考にできるものは結構あります。ネットで検索できるのは便利ですね~
ぴったりの資料がない場合は自分で作ってみる

参考資料を探してみたけど、ちょうどいい感じの資料が見つからない…
こういうこともあります。
どういうキーワードで検索すればいいか分からないこともあるし、そもそも資料が存在しないこともあります。
ぴったりの参考資料が見つけ出せない場合は、自分で資料を作ってしまいましょう~
例えば、とある既存のキャラクター資料を探していたけど、そのキャラクターの背面デザインがどこにも存在しなかったとき。これはもう、自分で想像してみるしかありません。
デザインを考えながら3Dモデルを作っていくのは難しいので、まずは想像する背面デザインを描いてみるのがいいです。
頭だけで考えるより実際に描いてみたほうが、考えが整理されて形になりやすかったりします。
形状や構造がよく分からない、調べてみてもいい参考資料がない、そういうオブジェクトを作るときは、テスト的にその部分だけ簡単な3Dモデルで作ってみるといいです。
テストの3Dモデルがいい感じにできれば、テストモデルを参考にして本番のモデルが作れます。
探しても資料がないなら仕方ないので、自分で参考となる資料を作るしかないです。
資料はあくまで参考用、デザインなどをそのまま使うのはNG

いい3Dモデルを作るためには、たくさんの参考資料が必要です。
いまはネットで検索すれば、だいたいの資料は探すことができます。ネット便利です。
でも気を付けないといけないのは、
ネット上にある資料のほとんど(特に画像)は、著作権を持っているということです。
いろんな資料を”参考”にするのは問題ありません。
まったくなんの資料も見ずに作れと言われても、そんなのは無理です。
ただ、すでに世の中にあるものはだいたい著作権がある、ということは覚えておくべきです。
集めた資料はあくまで参考用として、資料をそのままトレースしたり、完全にマネたりしないように注意が必要です。仕事として作る3Dモデルの場合は、特に要注意です。
どのくらい参考資料に似てたら著作権的にアウトになるのか、その線引きは分かりにくいです。
こちらの法律事務所さんでは、このように書かれていました。
他人の既存のイラストや画像を参考にすること自体が、著作権侵害になるわけではない
既存のイラストや画像を参考にする場合、その本質的特徴部分が類似すると著作権侵害となる
他人のイラストや画像を参考にする場合におさえておくべきポイント:咲くやこの花法律事務所
参考資料に似ているかどうか考えるとき、判断材料のひとつにはなるかと思います。
著作権のことって難しいし、トハも完璧に理解できているわけではありません。
でも普段から意識的に、気を付けようと心がけています。
このブログの運営も、著作権については書籍で勉強しながらやっています。
基本的に著作権というのは、クリエイターやその創作物を守ることが目的で、新しく作られる創作物を規制・制限するのが目的ではない、と認識しています。
このブログを見てる人は、3Dモデルを作ることに興味がある人だと思います。
つまり、
みんなものを作る人=クリエイターです。
みんな作ったものすべて、著作権に守られています。
自分は著作権に守られながら、他のクリエイターの著作権は侵害しちゃう。こうなってしまったらよくないので、クリエイターのはしくれとして、お互いの著作権を守る意識が必要です。
著作権については侵害しないようにしっかり注意しつつ、参考資料はたくさん集めて新たなもの作りに活用する、こうできるのが理想的です^^
著作権の基本的なことについては、下記サイトの説明が分かりやすかったです~
まとめ:集めた資料の分だけ、作る3Dモデルの説得力が増す

3DCGというのは、現実世界に存在しないものでも作り出せます。そこが大きな魅力です。
でも、存在しないものを”まるで存在しているよう”に見せるには、説得力が必要になります。
説得力ってなにかというと、違和感のない造形だったり、物理的に正しい動きだったり、破綻してないライティングだったりします。
これらのものは、参考にできる資料が現実世界の中にたくさんあります。
参考資料をたくさん集めて、資料をよく見ながら作ること。
これをやった分だけ、作る3Dモデルのクオリティは上がり、説得力は増します。
逆に、やらなければクオリティは上がらず、説得力もなくなるということです。
これはもう、いっぱい参考資料を集めた方がぜったいお得です。
幸いにもインターネットという、資料探しにはうってつけのものがあります。ネットで満足できる資料が見つけられなかったら、図書館とか博物館に足を運んでみるのもいいです。
これから3Dモデルを作ろうと考えているのなら、まずは資料を探すことから始めてみてください~
たくさん資料を集めて準備が整ったら、実際に3Dモデルを作ってみましょ~
そのときは、こちら↓の記事たちもぜひ参考にしてみてください^^
おまけ:トハモデル作成のために集めた資料たち
ブログによくいるトハも3Dモデルですが、作るときはもちろん資料を集めました。
おまけとして、トハモデルを作るために用意した参考資料をご紹介します。
①最初のラフイメージ
…通勤中に指でスマホに描いたやつ。想像で描くとハトはこうなる

②紙に鉛筆で描いたデザイン画
…ハトの写真を見ながら描いたやつ。方向性ほぼ決定

③いろんなハトの写真
…模様と色の参考に。ハトの模様もいろいろ

あと駅のホームを歩いてるハトを観察したりもしました。
で、なんやかんやで完成した3Dモデルがこれです。

おまけのせいでこの記事の説得力は失われたかもしれない。
- Coments - コメント一覧
トハさん、こんにちは。今月から3Dモデリングを始めてみたいと思い立った、超・超初心者です。まずはチュート動画などで手を動かしてナンボとは思いつつ、考え方の座学をこちらのサイトにお世話になっております。
いつかオリジナルの3Dモデルを作れるようになったら、こちらのサイトのトハさんモデルのように、文章の間にイラストのように使いたいなと思っているのですが、これ(いろいろなポーズのついたトハさんモデルに、文字や電球などもついた可愛らしいpng画像化)はどのようにされているのでしょうか…?
もしご迷惑でなければ、トハさんモデルの、イラストのような塗り?のやり方も教えていただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
あぷりこさん、コメントありがとうございます~
トハのブログ記事も見ていただいてどうもです!これから3DCGを始めてみたいあぷりこさんの参考になれば幸いです~
さてご質問の件についてお答えしますね。
ブログによくいるイラストぽいトハモデルの画像はBlenderとPhotoshopで作成しています。
1)Blenderでモデルのテクスチャとマテリアルを設定
2)Blenderでモデルにポーズをつけてレンダリング
3)レンダリング画像をPhotoshopに持っていって文字など入れて完成!
という流れで作っています。
Blenderでのマテリアル設定ですが、トハはこちらのdskjalさんのサイトを参考にしました。
他にもセルルックやトゥーン調マテリアルといった単語で検索してみるとイラストのようなマテリアルの作り方についていろいろ解説が出てくると思います。
手前味噌ですがトハの動画でもマテリアルの設定とレンダリングの説明をしてるものがあるのでよかったら見てみてください^^
https://www.youtube.com/watch?v=C1zRLbRB44g
レンダリング設定で「透過」というのにチェックすると、3Dモデル以外の部分を透明にしてレンダリングしてくれるのでPhotoshopなどの画像編集ソフトで加工しやすくなります。
また、ポーズはBlenderで付けています。
ポーズを付けるにはアーマチュアとウェイトの設定をする必要があります。
こちらはちょっと専門的になってくるので最初は難しく感じると思います。なのでまずはポーズ無しでレンダリングしてみるのもいいと思います~
ウェイトの付け方などの解説動画もYouTube等にたくさんありますので、少~しずつ範囲を広げながらやっていってみるのが良いかと思います。
文字を入れたりする作業はトハは使い慣れているPhotoshopでやりますが、画像編集できるならなんのソフトでも大丈夫です。ちなみにテクスチャを描くのもトハはPhotoshopでやりますがクリスタとか他のお絵かきソフトでもOKです。
レンダリングした3Dモデルの画像に背景を付けたりしていい感じに整えればできあがりです!
ぜひいつかチャレンジしてみてください~
あぷりこさんの楽しい3DCGライフを応援しています!^^
トハさん、ご返信をありがとうございます…!
とても詳しく解説していただいて、感激です。
まだまだモデリング自体の勉強もおぼつかない時にするような質問ではないと思ったのですが、どのような手順でトハさんイラストを作られたのかを教えていただいたおかげで、「それができるようになるまで頑張りたいな!」と1本道筋を定めることができました。
3Dを勉強するのに、(最初の)目標がイラスト化というのもヘンな話ですが…トハさんイラストがとってもかわいくて心を掴まれてしまった部分があります。いろんなポーズのトハさんは、アーマチュアとウェイトの設定までしてある豪華トハさんだったんですね。ブログの色々なところにたくさん使われているのに、ひとつひとつポーズをつけてレンダリングしてPhotoshopという工程を経たものだったのですね~!すごいです。
まずはもちろんモデリングを、そしてテクスチャとマテリアルを勉強して、思い描いたレンダリングをできるように…。楽しみながら、3Dモデリングが趣味だよ!と言えるようになりたいと思います。参考にされたサイトや調べ方まで教えていただいて、本当にありがとうございました。今後ともトハさんの記事と動画を大いに参考にさせていただきます!
あぷりこさん、返信どうもありがとうございます~
これから3DCGの勉強をしていくにあたって、具体的な目標があるというのはとてもいいことだと思います。
やりたいことがあるとモチベーションにもなりますしね!趣味は3Dモデリングって言えるのなんかいいですね。
そしてうれしいお言葉をありがとうございます。
トハモデルをかわいいと思っていただけて光栄です。
実はトハはイラストが上手に描けません。
えんぴつでラクガキみたいな絵なら描けるのですが色をきれいに塗ったり線をきれいに清書したりするのがほんとにうまくできない💦
そんなトハにとって3Dモデルは救世主なのです~
通常3Dキャラモデルを1体作るのはイラストを1枚書くよりも時間がかかります。
でも1度作った3Dモデルはそのあと何回でも使うことができます!
ポーズを変えてレンダリングしてイラストのような画像を作って…というのは一見手間のようにも思えますが、この方法だとトハにもかわいい画像が作れるのです~
しかも3Dモデルは作画崩壊しません^^
おかげさまでこのブログにいるトハはみんなちゃんとまるまるしたいつものトハでいられます。
余談ですが作画崩壊しないというのは3Dモデルのメリットであり、デメリットにもなります。
2Dイラストだといわゆる「嘘パース」というものや手描き風のガサガサした表現なんかもさじ加減一つでできますが、3Dモデルでこれをやろうとするといろいろ仕込みが必要になります。
3Dモデルを使ったアニメ作品も最近は増えてきましたが、みんな3Dモデルでいかに2Dアニメっぽい表現を実現するかに苦心していたりします。
なので3DCGを勉強する目標がイラストっぽい3Dモデルというのもぜんぜん変ではないですよ~研究している人は結構多いです。
イラストみたいな表現から実写みたいなリアルな表現まで、いろんなことができるのも3DCGのおもしろいところです。
あぷりこさんがこれから作る3DCGが楽しみです~またいつでもブログに遊びに来てくださいね!